【第130号 】腎不全患者に合併する高カリウム血症について

【第130号 】腎不全患者に合併する高カリウム血症について

・腎臓疾患と食事について  ・高カリウム血症の薬について

 【腎不全患者に合併する高カリウム血症について】

 体を構成している「ミネラル」のカリウム(K)やナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)はそれ自体が一つの元素で、(核反応を起こさないかぎり)加熱しても無くなりません。(しかしお湯にさらして煮汁にゆでこぼすことはできます。)カルシウムとカリウムはまぎらわしく、混同される方がおられますが、この二つは全く別の元素です。
 一般に、健康(高血圧の予防)のためにはNa(塩分)は控えめ、K(カリウム)は沢山とるのが良く、Kが多い生野菜やくだものの摂取が勧められています。バナナはKを多く含み「バナナ健康法」が流行りましたよね。「腎臓」にとってもKは良い作用をしますので、Kの多い「すいか」は腎臓に良いと昔から言われてきました。そのほか、ポカリスエットや、トマトジュース、野菜ジュースなど健康に良いと思われる飲み物にはKが相当含まれています。病院の薬の「腎臓を保護する薬」にも、Kを上昇させる作用があります。腎機能が正常な方は、Kを摂りすぎたとしても余分なKは尿から排出されるため高くなりすぎることはありません。
ところが!
腎臓の働きが3分の1以下に低下して「腎不全」になりますと、Kが尿から出にくくなり、体に溜まってKが高すぎる状態(=高K血症)になりやすくなります。高K血症は心臓に対する猛毒として作用し、不整脈や心臓まひを起こし急死の原因となります。それゆえ腎臓の働きが悪い方(血液検査でeGFRが60以下、特に30以下の方)は、本来ならば健康に良いはずのKの摂取を控えなければなりません。私は「腎臓に良いから」とスイカをわざわざ沢山たべて急死された患者さんを何人も見てきました。
他によくある誤解は、「野菜や果物のほうが肉や魚より良いと思った」「なまが悪い、と聞いたので、『干し柿』を食べた。」「野菜を電子レンジでチンしたのでKは減っていると思った」「のりやこんぶは野菜じゃないから良いと思った」「缶詰のくだものが腎臓食の給食についてきていたから、わざわざ缶詰のくだものを買ってきて食べている」「コーヒーや抹茶は野菜じゃないからよい」「みかんはダメと言われたのでネーブルを買って食べた」「みかんやりんごはバナナよりはKが低いと聞いたのでダンボール一箱もらったみかんを食べた」「知人のすすめで健康食品(青汁など)を摂っている」「さしみを沢山たべた」などなど。
これらは皆間違った考え方で運悪ければ急死することになりかねません。高K血症にくれぐれも御用心ください。

 最後に繰り返しますが、カリウムを取りすぎて有害なのは腎臓の働きの悪い方に限られます。腎機能が良い方は、健康のためどんどんカリウムを摂取いただいて結構です。「腎臓が良いか悪いかわからない」方は一度腎臓内科を受診してみて下さい。

(腎臓内科医長 富田 正郎)



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 【高カリウム血症の薬について】

 腎不全における高カリウム血症の治療は、まずカリウムの摂取量を減らし、原因となる薬を中止します。それでも不十分な場合はカリウムを吸着し、便や尿とともに体の中に出す働きのあるお薬を使用します。また、緊急に治療が必要な場合は、グルコン酸カルシウム(カルチコール®)で不整脈を予防したり、重曹(メイロン®)を投与して酸性に傾いた血液を中和したり、血液透析を行います。今回は、カリウム吸着剤の2種類について説明します。

ポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリメート®、アーガメイト®

ポリスチレンスルホン酸カルシウムは、腸内のカリウムイオンと本剤のカルシウムイオンを交換し、カリウムを体外に排泄させることにより、血中のカリウム値を低下させます。この薬は便秘を起こしやすいので、便秘を予防する目的でソルビトール溶液(糖類の一種)と一緒に飲むことがあります。アーガメイト®はゼリー剤のため、水分制限のある人やカリメート®が服用できない人に利用されます。

ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート®

ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは、腸管内でカリウムイオンとナトリウムイオンを交換することで高カリウム血症を改善します。カリウム吸着剤は便秘を起こしますが、ケイキサレート®はナトリウムを放出し、浸透圧により便に水分を含ませるため、便秘を起こしにくいと言われています。
どちらのお薬も定期的に検査を受け、効果や副作用をチェックしましょう。
お薬を使用するうえで、不明な点や気になることがある場合は、医師・薬剤師にご相談ください。

(薬剤師 田代 早紀)



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 【腎臓疾患と食事について】

 前述で富田医師が説明されたように、腎機能の悪い方ではカリウム(K)の摂取制限を行います。また、たんぱく質制限や塩分制限も腎臓病食事療法の主体となるものですが、今回は『食事からのK制限』を中心に説明します。
K制限と言われても、何を食べたらいけないの?どれだけ控えるの?と疑問に思うことはたくさんあると思います。腎機能の正常な方では1日2000〜2500mgのK摂取を目安量として定められており、2006年の全国調査では1日平均男性2384mg、女性2215mg摂取しているといわれています。腎機能の低下した方では1日1000〜1500mg以下(普通食の約1/2以下)に控える必要があります。まず気をつけることは、肉・魚・乳製品などを食べ過ぎないということです。これらはたんぱく質が多い食品ですがKも合わせて多いのが特徴です。次に生野菜や果物摂取に注意することです。生野菜は茹でこぼし法や水さらし法を実施すること、果物は基本的に摂取を控えることをお勧めします。
食品中のK含有量をいくつか紹介します。
(1)バナナ1本 360mg
(2)みかん1個 120mg
(3)じゃが芋1個 410mg
(4)野菜ジュース(1本200ml) 310mg
(5)スポーツ飲料(500ml) 100mg
(6)鶏肉(100g) 300mg。
同じような食品でも大きさや種類によってKの量は違いますが、以上の事を参考に日々の食事療法に取り組まれてはいかがでしょうか。
栄養に関するご相談等がありましたら、栄養管理室までいつでもご連絡ください。

(管理栄養士 近藤 高弘

カリウム排出ケイキサレートの問題点

ケイキサレートにいいたい 否自分に

ケイキサレートとはこのブログでも何度もでてくる
「カリウム過多」には救世主といえると思ってきた。
そもそも4〜5年前に処方されたときにはじめて知った
カリメートが最初だ。

カリウム過多で渡されたのでなく
2011年の311大災害をきっかけとして
大災害で万が一透析にかかれない事態を想定して
その災害時数日間を
このカリウム吸着剤でその場をしのぐように
保管するように渡されたものだった。
しかし他のクリニックでは
常用している患者を聞いていたが
カリメートは便秘しやすく
とても常用する気が起こらない最低の味覚だった。
それでもこの間一度や二度は
食べるもので予防のために服用したことはあった。
2年くらい前になって「ケーキサレート散」が
期限切れになったカリメートに変わって配られた。

災害用というので常時携帯するには
あのカリメートは重すぎてやっかいだったので
わずか5gとなって
これは鬼に金棒と思ってきた。
とはいっても災害用には違いないとしてきた。

それが「ケイキサレートドライシロップ」になって
味もさらにフルーツ味になり
災害用としてたのが
積極的に常用するクスリとして位置づけられたのか
他の患者で常用するのを聞くようになった。
わが輩も少しずつ使用頻度が高くなり
その恩恵を受けたかのように思ってきた。
それがこの数週間前に
ケイキサレートシロップのジェネリック薬品として
当病院では
「カリセラムーNa末」しか取り扱わないという通知が配られた。
ジェネリック薬品とは成分がまったく変わらないで
安価なクスリと説明を受けてるし
CMでもそう謳っているが
ところがどっこい正確には対象の症状に対する成分ではと言って欲しい
まったく苦い以前のケイキサレート散に戻ってしまった。
いったん知ってしまった飲みやすい「ケイキサレートドライシロップ」を
求めないわけにはいかない。
すぐ看護師に相談したが院内処方はできないとのつれない返事。
それでも院外処方はしてくれるというので
先週通院する途中の薬局で手に入れようとすると
特殊なクスリなのか在庫はなく取り寄せになった。
それでも手には入って
さあこれからは野菜も魚も多少多く摂っても
ケイキサレートに助けてもらおうと
少し安堵感を抱いた。
ところでこのところ血圧が高い。
血圧が高いのはよくあることではあるが
足が吊る。
先週は木曜日の透析後半。
土曜日朝起きたとき。
日曜日も起床時引きつる脚を感じて必死に手で温めて
なんとか食い止め
山歩きに行けるかどうか
筋肉に残っている足釣りの「残像」を
注意深く感じながら
これなら行けるだろうと判断して出発した。
きのうのことだ。
山は比較的低山で足への負担もたいしたことはなかった。
にもかかわらず
また今朝の起床時にひどく足が吊った。
これはへんだ。
この3年近く山登りをして来たからといって
当日にしても後日にしても
足が吊るようなことはなかった。
透析後半でカラダの中の水分が少なくなって
基礎体重の設定に問題があったときは
吊ったことがあるが
山登りで汗をかいてたしかに水分を出してはいるが
下山直後の体重測定でも問題はない。
最近変わったことと言えばクスリではケイキサレートくらいで
単純にカリウム吸着だけなら
問題ないと思い込んでいた。
しかし念のために見てみて驚いた。
この世には単純なクスリはないようで
れっきとした副作用が示されている。
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(参考)1,236例中108例(8.7%)に副作用が認められ、 その主な症状は下痢39件(3.2%)、悪心35件(2.8%)、 浮腫25件(2.0%)、便秘23件(1.9%)、低カルシウム 血症21件(1.7%)、嘔吐20件(1.6%)などであった。
(ケイキサレート散承認時及び1975年2月までの副 作用調査)
重大な副作用 
1)心不全誘発(頻度不明)
心不全を誘発することがあるので、ナトリウム摂
取を制限するなど十分に注意すること。
2)腸穿孔、腸潰瘍、腸壊死(頻度不明)
ポリスチレンスルホン酸ナトリウムのソルビトー ル懸濁液の経口投与により、小腸の穿孔・粘膜壊 死4)、大腸潰瘍、結腸壊死4),5)等があらわれたと の報告がある。 本剤の経口投与により、激しい腹痛又は下痢、嘔 吐等があらわれた場合には本剤の投与を中止し、 適切な処置を行うこと。
 
盪その他の副作用 下記の副作用があらわれることがあるので、観察を 十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置 を行うこと。
下痢、悪心、嘔吐、便秘、胃部不快感、食欲不振、 腹痛
注1)ナトリウム摂取を制限するなど十分に注意すること。
 注2)カルシウム剤の補給などの適切な処置を行うこと。
 
4.高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量
するなど注意すること。
 
5.妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。
 
6.適用上の注意
投与時の注意 本剤の投与では、消化管への蓄積を避けるため、便 秘を起こさせないよう注意すること。また、便秘を 起こした場合は、浣腸等の適切な方法を用いて排便 させること。
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これに加えネット上「お薬110番」のでは
もう少し分かりやすく副作用にはこうある。赤字は思い当たるこのところの症状である。
便秘が多いほうです。便秘が続くとカリウムが排出されないので、効果が弱くなってしまいます。またごくまれに、便秘がひどくなり重い症状となることがあります。便秘がちなときは、早めに受診するようにしましょう。
薬が効きすぎると、体のカリウム分が必要以上に低下して、低カリウム血症になることがあります。逆にナトリウム分は増えることがあり、浮腫(むくみ)や血圧の上昇をもたらします。

【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください

  • 結腸穿孔、腸潰瘍..ひどい便秘、お腹が張る、激しい腹痛、吐く、下痢。


【その他】

  • 便秘、吐き気、食欲不振、下痢
  • 浮腫(むくみ)、血圧上昇
  • 低カリウム血症..だるい、筋力低下(力が入らない)、便秘、動悸、脈の乱れ。
  • 低カルシウム血症..手足のふるえ、しびれ、ピリピリ感、ぴくつき、筋肉の脱力感、筋肉けいれん、気分変調、動悸、血圧低下、全身けいれん、意識もうろう。
もちろんすべてがケイキサレートのせいではないかもしれないが
これらの可能性は否定できない。
この中でも筋肉のけいれんや血圧上昇は
かなり可能性が高い。
こういうときおそらく医師は
それを認めない。
降圧剤や心臓のクスリをすすめるのだろう。
さてわが輩はといえば
まずは初心に帰って少食策をすすめるべきなんだろう。
もちろん今後緊急時以外ケイキサレートの断薬しかない。。
やめてみて動からだが変化するかみてみることにする。
都合のいい薬はこの世にはないと思わせるに足りる

高カリウム血症 ケイキサレート散

ケイキサレートは腎不全における高カリウム血症に用いられる。
その本体はポリスチレンスルホン酸ナトリウムであり、ナトリウムとカリウムが交換されることで
体内の余分なカリウムを排出する。
インタビューフォームによると
ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは吸収されず、胃腸管を通過するにしたがって腸液の陽イオン
と交換するが、特に下部結腸においてカリウムイオン濃度は高く最もよく交換する。したがって、
ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは経口投与のみならず注腸投与(ケイキサレート散のみ)にお
いても十分な効果が得られる。反応終了後、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは糞便と共に排泄され、体内の過剰のカリウムが除去される。

と書かれている。
また、
ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの陽イオンとの親和性はカルシウム>マグネシウム>カリウ
ム>ナトリウムの順に大きい。

結腸内でカリウムがカリウムイオンとして存在しているので、そこにポリスチレンスルホン酸ナトリウムがくるとカリウムの方が親和性が高いため、ナトリウムとカリウムが交換されてカリウムがポリスチレンスルホン酸カリウムとなって糞便中に排出される。
さらに、マグネシウムやカルシウムを含むものはカリウムよりも親和性が強いため、カリウムよりもこれらが引っ付いてポリスチレンスルホン酸マグネシウム、ポリスチレンスルホン酸カルシウムとなってこれらが排出されてしまうため下剤等の薬効の低下になる。
ケイキサレート散は内服と注腸でも用いられる。
注腸で用いる場合は、成人1回30gを水または2%メチルセルロース溶液100mLに懸濁して注腸する。と書かれている。
なぜ、注腸でも用いられるのか?!
鳥居薬品に電話して確認したところ、ケイキサレート散の服用は食後でも、食前でも、食間でもいつでもよいと!食事に関係なく、いつ飲んでもいいとのこと。
食事か少ない人でもこれを服用することで血漿カリウム値が低下すると!!
個人的にレナジェルやカルタンなどの様に食品中のカリウムを吸収させ難くすると思っていたが、そうではなかったようだ・・・・
色々と調べてみたが、、、、
食品中から摂取したカリウムは正常人ならば摂取量と同じだけ体外へ排出されるとのこと!
尿中が90%ほど、便中や汗などで10%ほど。
腎不全になると便中排泄が20~50%ほどになるとか!??
腎機能が低下すると消化管液などに混じってカリウムが排出されるそうな。そのため糞便中のカリウムの量が増えるとのようだ。
人間の体ってのは良くできてるもんで、ここがダメならこっちで!!って言う保険の保険そのまた保険っていくつも他の方法で代用しようとするんだなぁ。
さらに、回腸や空腸で、カリウムは吸収されて、下部結腸では逆に腸管内に分泌されるとのこと。
これで、ケイキサレート散が食事に影響されず、また注腸でも用いられる理由が分かった!!
添付文章で
ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム、スクラルファート、沈降炭酸カルシウム等
 
本剤の作用が減弱するおそれがある。
と書かれているがこれはどうやらアルミニウム、マグネシウム、カルシウムはカリウムよりもポリスチレンスルホン酸イオンとの親和性が高いためで、これらが引っ付いてしまい本来の効果を得られないためだ。大体1~2時間ぐらい空ければ問題ないとのこと。
チラージンはポリスチレンスルホン酸ナトリウムに吸着されるためで、吸収が低下する。
大体4~5時間ぐらい空ければ問題ないとのこと。んま、チラージンは基本的にいつ飲んでもいいからこれぐらいの時間間隔は特に問題なさそうだ。
 
あと、ナトリウムとカリウムを交換するのでナトリウムが余分に吸収されることに伴う、血圧上昇や浮腫が生じることがある。

カリウム濃度の異常: 水分と電解質代謝: メルクマニュアル18版 日本語版

merckmanual.jp/mmpej/sec12/ch156/ch156f.html

 

高カリウム血症 に移動 – 高カリウム血症とは,体内の総カリウム貯蔵量の過剰またはカリウムの細胞外への異常な移動によって血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることである。通常の原因は腎排泄障害であり,コントロールされていない糖尿病でみ …
カリウムは,最も豊富な細胞内陽イオンであるが,体内総カリウムのわずか2%程度だけが細胞外に存在する。細胞内カリウムのほとんどは筋細胞内に含まれるので,体内の総カリウム量は除脂肪体重に概ね比例する。平均的な70kgの成人は約3500mEqのカリウムを有する。
カリウムは細胞内浸透圧を決定する主要因子である。ICFおよびECFのカリウム濃度比は細胞膜の分極に強く影響し,ひいては神経インパルスの伝導および(心筋を含む)筋細胞の収縮など,細胞の重要な過程に影響を及ぼす。したがって,血漿カリウム濃度の比較的小さな変化が大きな臨床症状を生むことがある。
カリウムを細胞内外へ移動させる因子の不在下では(水分と電解質代謝: 細胞内移動を参照 ),血漿カリウム濃度は体内総カリウム量と密接に相関している。血漿pHが一定であると仮定すれば,血漿カリウム濃度が4mEq/Lから3mEq/Lに減少すると,カリウムの不足量は全体で100〜200mEqとなる。血漿カリウム濃度が3mEq/L未満に低下すればカリウムの不足量は計200〜400mEqである。
インスリンはカリウムを細胞内に移動させるので,インスリン高値は血漿カリウム濃度を低下させる。糖尿病性ケトアシドーシスにみられるようにインスリンが低値になると,カリウムが細胞外へ移動して血漿カリウム濃度が上昇し,これは体内総カリウム量が不足していてもときに生じる。βアドレナリン作動薬,特に選択的β2作動薬はカリウムを細胞内に移動させるが,β遮断薬やα作動薬は恐らくはカリウムを細胞外へ移動させる。急性代謝性アシドーシスではカリウムは細胞外へ移動するが,急性代謝性アルカローシスではカリウムは細胞内へ移動する。
しかし,血漿HCO3濃度の変化の方がpHの変化よりも重要であると考えられる;無機酸の蓄積に起因するアシドーシス(非アニオンギャップ性高塩素性アシドーシス)では血漿カリウム濃度がより上昇しやすい。これに対して,有機酸の蓄積による代謝性アシドーシス(高アニオンギャップ性アシドーシス)では高カリウム血症は生じない。
したがって,糖尿病性ケトアシドーシスに一般的な高カリウム血症は,アシドーシスよりもインスリン欠乏に起因することの方が多い。急性呼吸性のアシドーシスやアルカローシスは,代謝性のアシドーシスやアルカローシスほどには血漿カリウム濃度に影響を与えない。それにもかかわらず,血漿カリウム濃度は血漿pH(およびHCO3濃度)との関連で解釈すべきである。
食事からのカリウム摂取量は,正常では40〜150mEq/日と多様である。定常状態では,便中への排泄量は通常は摂取量のほぼ10%である。尿中排泄はカリウム平衡に寄与している。カリウム摂取が増加(1日に150mEqを上回るカリウムを摂取)すると,その後の数時間で過剰なカリウムの約50%が尿中に排泄される。残りのほとんどは細胞内区画に運ばれ,血漿カリウム濃度の上昇は最低限にとどめられる。
カリウムの摂取増加が持続すれば,カリウム刺激性のアルドステロン分泌によって腎臓からのカリウム排泄が亢進する;アルドステロンはカリウム排泄を促す。さらに,便からのカリウム吸収はある程度調節を受けるとみうけられ,慢性的なカリウム過剰では50%低下することもある。
カリウム摂取が減少すると,血漿カリウム濃度の大幅な変動に対する予備としての機能を細胞内カリウムが再び果たす。腎臓でのカリウム保持は食事性カリウムの減少に応じて比較的緩徐に進み,腎臓のナトリウム保持能と比べてはるかに効率が悪い。したがって,カリウム欠乏はしばしば臨床的に問題となる。尿中カリウム排泄量が10mEq/日であれば,ほぼ最大限のカリウム保持が腎臓で行われていることを表し,著明なカリウム欠乏が示唆される。
急性アシドーシスがカリウム排泄を障害するのに対して,慢性アシドーシスおよび急性アルカローシスはカリウム排泄を促進することがある。ナトリウム大量摂取またはループ利尿薬療法によって生じるような遠位ネフロンへのナトリウム輸送の増加は,カリウム排泄を促進する。
白血球数が105/μLを上回る慢性骨髄性白血病患者では,検体を処理前に室温に置くと検体中の異常白血球が血漿中のカリウムを取り込むので,ときに偽性低カリウム血症,すなわち血清カリウム濃度の偽低値が生じる。これは血漿または血清を血液検体から速やかに分離することで防ぐ。
偽性高カリウム血症,すなわち血清カリウム濃度の偽高値はより一般的であり,典型的には溶血や細胞内カリウムの放出によって生じる。これを予防するために,採血者は細い針で急激に血液を吸引したり,血液検体を過度に撹拌したりすべきではない。血液凝固時に血小板からカリウムが放出されるので,偽性高カリウム血症は血小板数が106/μLを上回るときにも起こりうる。偽性高カリウム血症の場合は,血清カリウム濃度とは対照的に血漿カリウム濃度(非凝固血)は基準範囲内にある。
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高カリウム血症の原因

高カリウム血症の症状

カリウムは体に必要不可欠なミネラルであり、体液の浸透圧の調整、筋肉の収縮、神経の働きを保つ役割があります。腎臓が正常に働いているときは、多くのカリウムを摂取しても尿と共にカリウムが排泄されます。しかし、腎不全など、腎臓が上手く機能しないとカリウム濃度が高くなり、高カリウム血症となります。
軽度の高カリウム血症では、症状がほとんどありませんが、カリウム濃度が高度に上がると、人体に重篤な悪影響を及ぼします。
主な症状は、
・舌の異常感覚、知覚過敏
・四肢麻痺、筋力の低下
・悪心、嘔吐
・下痢
・不整脈、頻脈
などがあります。また、到死性不整脈から心室細動を起こして心停止、突然死することもあります。
高カリウム血症の主な原因は以下が挙げられます。
・カリウムを多く含む食品の摂りすぎ
・偽性高カリウム血症
白血球・血小板の増加など、採血した検体の問題であり、病気ではありません。
・細胞内のカリウムが血液中へ移動
代謝性アシドーシス(血液の酸性化、循環不全、重篤な感染症などにより発生)、消化管出血、インスリンの不足、β遮断薬の使用、ジギタリス中毒、などです。
・カリウム負荷
細胞の崩壊(重度の火傷や怪我による挫滅症候群、化学療法による腫瘍崩壊)、カリウム製剤の投与などです。
・腎臓のカリウム排泄障害
腎不全、アルドステロン欠乏、薬の副作用などです。

高カリウム血症の治療法

高カリウム血症を予防するためには、腎不全など、原因となる疾患の治療を優先させます。腎臓機能が低下しているときは、カリウムを多く含む果物・生野菜・イモ類・豆類などの摂取を控えます。
災害などで重度の火傷や怪我を負い、クラッシュシンドロームとも呼ばれる挫滅症候群の恐れがあるときは、高カリウム血症による心不全を引き起こさないためにも、緊急透析や人工呼吸器による呼吸管理など、医療従事者による対応が必要です。