SGLT2阻害薬内服で、60g/日のブドウ糖が尿中に排泄される。

今まで、SGLT2阻害薬は症例を絞って(若い人、脱水予防できる人、利尿剤を飲んでない人・・・)、短期間投与にとどめるべき薬と強調してきました。
私自身も糖毒解除のために短期間処方することがあります。
SGLT2阻害薬投与により、
空腹時血糖値は30~ 40mg/dL、
食後2時間血糖値はおよそ60mg/dL
下がるくらいの効果が期待できるので糖毒解除には便利な薬剤と思います。
しかし短期間にとどめるべき薬剤ということは変わりません。
さてSGLT2阻害薬に関して、1日に100gのブドウ糖が尿中に排泄されて、400kcal/日が失われるとブログ記事で再三書いてきました。
しかし、私の勘違いだったようで、最近メーカーのMRさんに確認したところ、
1日に60gのブドウ糖が尿中に排泄されて、
240kcal/日が失われるということでした。

炊いたご飯一膳分のカロリーに相当するので、そのように理解すると記憶しやすいですね。
腎糸球体で濾過されて尿細管に排出されたブドウ糖は、近位尿細管に発現しているSGLT2で約90%、SGLT1で約10%の割合で再吸収されるので合計100%吸収されて、健常者では尿糖はでません。
そしてSGLT2阻害薬でSGLT2が完全に阻害されても、SGLT1の予備能によりブドウ糖はあるていど再吸収されます。
つまり、本来SGLT2分の160g尿中に排泄されるはずのブドウ糖が、SGLT1の予備能によって、120g(いつもの20g+予備能100g=120g・・・約67%)再吸収するので、60gの排泄ということになるのです。
健常者
1)
糸球体で濾過されるグルコース、180g/日
2)
SGLT2に再吸収されるグルコース、160g/日(約90%)
3)
SGLT1に再吸収されるグルコース、20g/日(約10%)
4)
尿糖排泄なし
SGLT2阻害薬でSGLT2が完全に阻害された場合
1)
糸球体で濾過されるグルコース、180g/日
2)
SGLT2に再吸収されるグルコース、0g/日(0%)
3)
SGLT1に再吸収されるグルコース、120g/日(約67%)
4)
尿糖排泄60g/日。ご飯約1膳分。
本日の記事は以下の文献を参考にしました。
*Abdul-Ghani M.A.et all:
DIABETES, VOL. 62, 3324-3328 OCTOBER 2013

SGLT2阻害薬:糖尿病治療薬

糖尿病はその名の通り、尿から糖が検出される病気です。糖は重要な栄養源であるため、通常は尿から糖が検出されることはありません。しかし、糖尿病では血液中に含まれる糖が多すぎるために尿からも糖が検出されてしまいます。
 
また、糖尿病では血糖値(血液中の糖濃度)が上昇してしまい、これによって腎臓が悪くなったり、目が見えなくなって失明したりします。このような合併症を防ぐために使用される糖尿病治療薬としてSGLT2阻害薬があります。
 
SGLT(グルコーストランスポーター)とは
尿は腎臓で作られます。この時、腎臓で最初に作られる原尿は一日に約150Lにもなります。しかし、実際に一日に150Lも尿が出ると大変なことになります。そこで、一度原尿が作られた後に水分や栄養など、体に必要な物質を再び体の中へと再吸収する機構が存在します。
 
全身を巡っている血液が腎臓を通過するとき、腎臓は血液中の不要物をこし取ることによって原尿を作ります。この時に作られた原尿は尿管を通過して膀胱へと蓄えられます。この過程の中で、尿が尿管を通過するときにアミノ酸や糖、水分など体にとって必要なものが血液中へと再吸収されます。
 
アミノ酸、糖、水分の再吸収
 
この時、尿管をもっと細かく見ていくと「近位尿細管」、「ヘンレループ」、「遠位尿細管」と呼ばれる三つの部位に分けられます。この中でも、糖の吸収に大きく関わっている部位が近位尿細管です。
 
腎臓で作られた原尿に含まれる糖の再吸収は主に近位尿細管で行われます。この時、近位尿細管で糖のほとんどが再吸収されます。これに大きく関わっている輸送体がSGLT2です。
 
糖は栄養源として重要であるため、SGLT2が尿中の糖を認識して取り込み、血液中へ放出する働きをします。この糖を血液中へと輸送するSGLT2が近位尿細管に存在するため、尿中に含まれる糖吸収の大部分が近位尿細管で行われます。
 
糖の再吸収の約90%は「近位尿細管に存在するSGLT2によって行われている」と言われています。
 
なお、糖の吸収で重要となるSGLT2ですが、このSGLT2には兄弟のようなものが存在します。専門用語ではこの兄弟のようなものをサブタイプと表現します。
 
糖の輸送に関わるSGLTには主にSGLT1、SGLT2、SGLT3の三つが存在します。何が違うかと言うと、簡単に言えば存在部位が異なります。
 
SGLT
 
これらSGLTは様々な場所に存在していますが、特に近位尿細管での糖の再吸収に関わる輸送体がSGLT2です。
 
SGLT2阻害薬の作用機序
SGLT2は尿管の中でも近位尿細管で糖を再吸収し、血液中に糖を放出します。そのため、SGLT2が働くことで糖が再吸収された分だけ、血液中の糖濃度も高くなることが分かります。
 
そこで、SGLT2を阻害して近位尿細管での糖の再吸収を抑えることができれば、尿と共に糖を積極的に体外へと排泄することが可能になります。
 
SGLT2阻害薬の作用機序
 
糖尿病はもともと「尿から糖が検出される病気」のことです。そのため、自然の状態で尿から糖が検出されることは大きな問題となります。これは、血液中に含まれる糖分が多いために原尿に含まれる糖まで多くなり、糖の再吸収が間に合わなくなった結果として起こります。
 
ただし、糖尿病で本当に問題となるのは「血液中にどれだけの糖が含まれているか」になります。血液中の糖が多ければ多いほど、糖による毒性が表れてしまいます。その結果として、網膜症や腎症、神経障害などの合併症を引き起こします。
 
そのため、糖尿病の治療を考える上で重要なのは「血液中の糖を減らすこと」になります。
 
今回の場合、近位尿細管に存在するSGLT2を阻害することで糖の再吸収を抑制します。その結果、尿中にたくさんの糖が含まれるようになり、尿と共に糖を排出することができるようになります。
 
本来は尿中に糖が検出されることは良くないことですが、SGLT2阻害薬によって「尿と一緒に糖を排出し、血糖値を下げる」という意味で尿から糖が多量に検出させることは問題ありません。
 
なお、血糖値を下げる唯一のホルモンとしてインスリンがありますが、糖尿病治療薬の多くはインスリンに働きかけることで血糖値を下げます。それに対して、SGLT2阻害薬はインスリンに関係なく血糖値を下げることができます。
 
そのため、SGLT2阻害薬は糖尿病治療の新たな選択肢として重要になります。
 
ただし、SGLT2阻害薬を服用すると尿に含まれる糖分が高くなるので、その分だけ尿路感染の危険性が高まります。特に女性は尿道が短いために膀胱炎などの感染症を引き起こしやすくなると言われています。
 

SGLT2阻害薬内服で、60g/日のブドウ糖が尿中に排泄される。

こんにちは。
今まで、SGLT2阻害薬は症例を絞って(若い人、脱水予防できる人、利尿剤を飲んでない人・・・)、短期間投与にとどめるべき薬と強調してきました。
私自身も糖毒解除のために短期間処方することがあります。
SGLT2阻害薬投与により、
空腹時血糖値は30~ 40mg/dL、
食後2時間血糖値はおよそ60mg/dL
下がるくらいの効果が期待できるので糖毒解除には便利な薬剤と思います。
しかし短期間にとどめるべき薬剤ということは変わりません。
さてSGLT2阻害薬に関して、1日に100gのブドウ糖が尿中に排泄されて、400kcal/日が失われるとブログ記事で再三書いてきました。
しかし、私の勘違いだったようで、最近メーカーのMRさんに確認したところ、
1日に60gのブドウ糖が尿中に排泄されて、
240kcal/日が失われるということでした。

炊いたご飯一膳分のカロリーに相当するので、そのように理解すると記憶しやすいですね。
腎糸球体で濾過されて尿細管に排出されたブドウ糖は、近位尿細管に発現しているSGLT2で約90%、SGLT1で約10%の割合で再吸収されるので合計100%吸収されて、健常者では尿糖はでません。
そしてSGLT2阻害薬でSGLT2が完全に阻害されても、SGLT1の予備能によりブドウ糖はあるていど再吸収されます。
つまり、本来SGLT2分の160g尿中に排泄されるはずのブドウ糖が、SGLT1の予備能によって、120g(いつもの20g+予備能100g=120g・・・約67%)再吸収するので、60gの排泄ということになるのです。
健常者
1)
糸球体で濾過されるグルコース、180g/日
2)
SGLT2に再吸収されるグルコース、160g/日(約90%)
3)
SGLT1に再吸収されるグルコース、20g/日(約10%)
4)
尿糖排泄なし
SGLT2阻害薬でSGLT2が完全に阻害された場合
1)
糸球体で濾過されるグルコース、180g/日
2)
SGLT2に再吸収されるグルコース、0g/日(0%)
3)
SGLT1に再吸収されるグルコース、120g/日(約67%)
4)
尿糖排泄60g/日。ご飯約1膳分。
本日の記事は以下の文献を参考にしました。
*Abdul-Ghani M.A.et all:
DIABETES, VOL. 62, 3324-3328 OCTOBER 2013

SGLT1/2阻害薬LX4211の有効性

ググったら出てきたので、まるごと引用です。

SGLT1/2阻害薬LX4211の有効性

  • 提供元: ケアネット
  • 公開日:2012/07/09

新しい作用機序を持つ経口の2型糖尿病治療薬であるSGLT1/2阻害薬LX4211の試験結果が、B Zambrowicz氏らによりClinical Pharmacology & Therapeutics誌Early Online Publication 2012年6月27日付で報告された。この結果、LX4211はプラセボと比べて、消化器症状などの有害事象を増加させることなく、空腹時血糖値や HbA1c値を有意に改善させることが明らかになった。
SGLT2は腎臓のグルコース再吸収に関与する輸送体である。SGLT2阻害による血糖コントロール改善が示されており、現在、複数のSGLT2選択的阻害薬が開発段階にある。
SGLT1 を介さず、SGLT2に選択性の高い阻害薬が多く開発されているのは、主に腸管のグルコース輸送体として存在するSGLT1の腎臓のグルコース再吸収への 貢献がわずか10%であることや、SGLT1欠損患者ではグルコースとガラクトースの吸収不良に起因する重篤な消化器症状が示唆される等が理由とされてい た。
しかしRoux-en-Y法による肥満外科手術や難消化性でん粉摂取後は、遠位小腸および大腸へのグルコース輸送が増加しても、消化 器症状を発現することなく耐糖能を改善できている。これは、GLP-1分泌によるものと考えられている。このことから、SGLT1/2阻害薬も、選択的 SGLT2阻害薬同様に、消化器症状に影響を与えずに、腸管からのグルコース吸収を遅延させ血糖コントロールを改善できるのではないかと、今回検討が行わ れた。
試験対象は、38歳~64歳の2型糖尿病患者36例。プラセボ群、LX4211の150mg投与群、同300 mg投与群、の3群に無作為に割り付け、1日1回経口投与を28日間継続した。
主な結果は以下のとおり。
・LX4211群はプラセボ群と比較して、28日後の空腹時血糖値、耐糖能、およびHbA1c値を含む血糖コントロール指標を有意に改善した。
・24時間UGE値は1日後、14日後、28日後においてプラセボ群と比較し、LX4211群で有意に増加した。
・LX4211群は、プラセボと比較して、血清トリグリセリド値を有意に低下させた。また、有意差は認められなかったが、体重と血圧は減少傾向、GLP-1濃度は増加傾向を認めた。
・有害事象発現は3群間で同等であり、緊急性尿路感染症、性器感染症、低血糖などはみられず、重篤な有害事象の報告はなかった。心血管イベント発現、心電図所見の有意な変化も認められなかった。
(ケアネット 佐藤 寿美)
引用は以上ですが、某社のSGLT2阻害薬はSGLT1もそれなりに阻害してしまうらしいです。
大変結構なことだと思います。

SGLT1/2阻害薬のLX4211は2型糖尿病患者の心血管リスクを低減する

2012/11/8

Dallas diabetes and endocrine centerのJulio Rosenstock氏

2型糖尿病患者において、ナトリウム・グルコース共輸送体sodium glucose transporterSGLT)1/2阻害薬であるLX4211は、収縮期血圧や体重、血糖コントロールなど複数の心血管イベントのリスク因子を改善できることが示された。胃腸、泌尿生殖器の有害事象についても良好な結果だった。Dallas diabetes and endocrine centerのJulio Rosenstock氏らが、11月7日までロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で発表した。
主に小腸に存在するSGLT1は、食事からのグルコース吸収と腎臓での糖再吸収を行う。一方、ほぼ全てが腎臓に存在するSGLT2は、腎臓での糖再吸収のみを行う。SGLT2阻害薬は、尿への糖排泄を促進するため、2型糖尿病患者の血糖値を低下させる。SGLT2阻害による血糖コントロールの改善は、低血糖のリスクを伴うインスリンに依存しないことも特徴だ。SGLT1及びSGLT2を阻害するLX4211は、臨床試験や2型糖尿病患者の短期試験において、消化管からの糖吸収を低減し、尿中へのグルコース排泄を促進することが示されている。
今回Rosenstock氏らは、メトホルミン単独療法で十分なコントロールができなかった2型糖尿病患者に対し、LX4211もしくはプラセボを投与し、LX4211の用量ごとに有効性と安全性を検討した。
対象は、年齢が18~75歳、BMIが45kg/m2以下、HbA1c値が7%以上10.5%以下で、メトホルミンで加療中の2型糖尿病患者299人とした。はじめの2週間でスクリーニングを行い、LX4211 75mgを1日1回投与する75mg qd群(59例、56歳、女性42%、BMI 33.4kg/m2、体重96.2kg、HbA1c値8.0%)、200mgを1日1回投与する200mg qd群(60例、56歳、女性72%、BMI 34.2kg/m2、体重95.6kg、HbA1c値8.3%)、200mgを1日2回投与する200mg bid群(60例、56歳、女性52%、BMI 32.8kg/m2、体重95.0kg、HbA1c値8.4%)、400mgを1日1回投与する400mg qd群(60例、56歳、女性52%、BMI 32.7kg/m2、体重91.4kg、HbA1c値8.1%)、プラセボを投与するプラセボ群(60例、55歳、女性57%、BMI 32.2kg/m2、体重90.6kg、HbA1c値7.9%)の5群に割り付けた。治療は12週間行い、その後2週間のフォローアップを実施した。12週後までに、75mg qd群で7例、200mg qd群で6例、200mg bid群と400mg qd群で5例、プラセボ群で7例が中断した。
主要有効性アウトカムは、ベースラインから12週後までのHbA1c値の変化とした。結果、HbA1c値はプラセボ群に比べ治療群全てで有意に低下した。最も低下したのは400mg qd群で、次が200mg bid群(ともにP<0.001)、200mg qd群、75mg qd群(P<0.005)と用量が多いほど低下した。
投与1日目の24時間尿糖排出は、プラセボ群に比べ200mg qd群において有意に増加した(P<0.05)。さらに、200mg qd群の12週後、200mg bid群の1日目と12週後、400mg qd群の1日目と12週後では、いずれもプラセボ群に比べ有意に増加した(P<0.001)。
12週後の体重は、200mg bid群が最も低下しており、次が200mg qd群、400mg qd群(いずれもプラセボ群と比べてP≦0.001)、75mg qd群の順だった。
12週後の収縮期血圧は、用量が多いほど低下した。特に、200mg bid群と400mg qd群はプラセボ群に比べ有意な低下が認められた(P<0.05)。
HDLコレステロールがベースラインに比べ12週後に有意な増加を見せたのは、75mg qd群、200mg bid群、400mg qd群(いずれもP<0.05)だった。LDLコレステロールは、12週後で有意な変化を認めなかった。
有害事象については、少なくとも1つの有害事象を有する割合が、75mg qd群で66.7%、200mg qd群で60.0%、200mg bid群で61.7%、400mg qd群で57.6%、プラセボ群で66.7%だった。有害事象による中止例は、75mg qd群で1.8%、200mg qd群で1.7%、400mg qd群で1.7%、プラセボ群で1.7%と良好だった。胃腸、泌尿生殖器の有害事象も良好だった。全死因死亡は全群で発生しなかった。
これらの結果からRosenstock氏は、「SGLT1/2阻害薬のLX4211は、2型糖尿病患者において、インスリンに依存せず、複数の心血管イベントのリスク因子を改善できることが示された」と結論し、「尿糖排泄量は200mg1日1回投与で水平状態に達したため、さらなる用量反応の改善はSGLT1阻害によって向上することが示唆された。今後は、心血管への影響や代謝の変化、安全性と耐性の関連を判断するための長期試験を行う必要がある」などと考察した。