話題のケトン体ダイエットと糖質制限ダイエットは何がちがう?

糖質制限ダイエットの基礎知識と方法

効果が高いと話題のケトン体ダイエット。ケトン体とは体脂肪が燃えているときに合成される物質です。ケトン体ダイエットのメカニズムはどのようなもので、糖質制限ダイエットとの違いは何か、ドクター監修の記事で解説します。

話題のケトン体ダイエットと糖質制限ダイエットは何がちがう?

糖質制限ダイエットに近しいものとして、ケトン体ダイエットというものがあります。その概要やメカニズム、糖質制限ダイエットとの違いについて解説します。

ケトン体ダイエットとは

体内でエネルギー源となるブドウ糖が不足すると、身体は脂肪を燃焼させてエネルギーとして使うようになります。このときに肝臓で作られるのが「ケトン体」。ケトン体は、アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸という、3つの物質の総称です。通常、私たちの脳は、エネルギー源としてブドウ糖しか利用できないとされています。しかし、ケトン体は、ブドウ糖の代わりに脳のエネルギーとして使えるといわれているのです。脳以外にも、さまざまな臓器のエネルギー源になるともいわれています。
ケトン体ダイエットでは、糖質を極端に制限し、血液中のケトン体を増やして、標準的な値を超えた「ケトーシス」と呼ばれる状態を作ります。この状態では脂肪が分解され、主なエネルギー源としてケトン体が使われるため、ダイエット効果が期待できるのです。また、「ケトーシス」になると空腹を感じにくくなるともいわれています。
具体的な方法としては、ダイエット開始から2週間ほどの間、炭水化物の摂取量を摂取カロリーの5%にまで抑えます。たとえば、1日の摂取カロリーが2,000カロリーの人なら100カロリー以内、1,600カロリーの人なら80カロリー以内、といった具合です。
こうした厳しい制限で「ケトーシス」の状態を作り、開始2週間後からは徐々に炭水化物の摂取量を増やしていきます。ただし、増やすといっても、摂取カロリーの20%以内に抑えます。
効果が非常に高いといわれていますが、思わぬ副作用が出ることもあります。
まず、ケトーシスになるまでは、炭水化物の摂取を厳しく制限しますので、体がだるくなったり、頭がぼーっとしたりすることがあります。また、ケトン体濃度が高くなると、身体がケトン体を体外へ排出しようとして、脱水症状を起こすことがあります。さらに、ケトン体のアセトンが原因で、口臭や体臭が甘酸っぱい匂い、いわゆるダイエット臭になることもあります。
さらに、酸性のケトン体が増えすぎると、血液や体液が酸性になる「ケトアシドーシス」を起こす可能性もあります。健康な方であればケトアシドーシスの心配はほぼありませんが、インスリンが体内で正常に機能していない1型糖尿病患者の場合は注意が必要です。糖尿病性ケトアシドーシスを発症すると、嘔吐や腹痛、脱水症状などを引き起こし、進行すると意識障害や昏睡を起こして死にいたる可能性もあります。

糖質制限ダイエットとケトン体ダイエットの違い

糖質の摂取量を制限するという意味では、ケトン体ダイエットと糖質制限ダイエットは似ていると言えるかもしれません。しかし、その制限の度合いにおいてかなり異なります。
ケトン体ダイエットでは、1日に摂取してもよい糖質の量が厳密に定められており、主食や芋類などを避けたりするだけではなく、調味料にまで細かく注意を払わなければ、定められた量を守るのは困難です。長期間、適度な量を減らしていこうという糖質制限ダイエットに比べると、制限が厳しく、実行のハードルが高いと言えます。
かなり極端な制限を行うため、ケトン体ダイエットは専門家の間でも賛否両論があります。健康状態に不安がある人が試してみたいという場合は、必ずかかりつけの医師や専門家に相談してから行いましょう。
また、1日の糖質摂取量を130g以下に抑えるという、ケトン体ダイエットに比べてかなりゆるい糖質制限でも、ダイエット効果は得られるという実験結果もあります。日本人の食事摂取基準では、1日に必要な推定糖質量は100gですので、こうしたゆるい糖質制限であれば、身体に問題となるレベルまでケトン体が増えるようなことは起こりません。
自分の体調や体型を考え、無理のない範囲でダイエットを行うことが大切です。

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