拷問のような痛みが何か月も続く

千葉県に住む歯科医師の菊池俊矢さん(仮名、45歳)は、9年前、神経障害で1年間苦しんだ経験をもつ。仕事に追われ、糖尿病の治療が思うようにできずにいたころ、ついに糖尿病昏睡を起こして入院。そのときに神経障害が出始めたのだ。当時、血糖値は450~500だった。
「最初は足の裏が分厚くなった感じで、感覚がなくなり、何だろうと思っているうち、その異常な感じが両足に広がって、足首、すね、膝、ももと、上にあがってきた。そして、膝を超えたあたりで、今度は強烈な痛みに変わったんです」。痛みを感じてから約2か月後のことだ。
痛みはとくに足首から下がひどく、ちょっと触れられただけでも飛び上がるくらい痛かった。安静にしても夜になっても、少しもよくならない。「眠るどころじゃない。もう拷問ですよ」。痛み止めを飲んで、それが効くころようやく眠って、朝、目が覚めると、また痛みと格闘する日々が始まった。
主治医の「回復には早くても2、3か月。とにかく血糖コントロールをよくして、それを継続すれば必ず治る」という言葉を支えに、ひたすら食事療法、インスリン療法に専念。とくに運動療法は、毎日20分の歩行がノルマ。痛みどめで感覚が麻痺した足を踏みしめ、がんばる。だが、努力もむなしく、痛みのゾーンは膝から20cm上まで進行してきた。


コントロールの改善が最高の特効薬

「痛み出して4か月に入ったころは、いつになったらよくなるのか、さすがに不安になりました。激痛は相変わらずで、仕事に復帰するめどもたたず、このころが一番苦しかった」。
そんなある日、新しい痛みに気づく。膝上の痛みで、しかも、みみずがはうように移動する。主治医に報告すると。「それが、神経が回復してきた証拠ですよ」という返事が返ってきたのだ。
事実、それを機に、徐々にではあるが痛みが減り始め、まず膝上部分が、次にすねの上半分の痛みがとれた。後戻りする方向で痛みのゾーンが下がりだした。約6か月かかって、全部の痛みがようやくとれた。
「痛みがとくに強かった4か月間は、本当に長かった。でも、なんとかがまんできたのは、主治医の先生の的確なアドバイスがあったからです。病状に応じて、うるさがらずにきちっと説明してくれたので、納得できたし、回復を信じることができた。
今は月2回のゴルフもできるし、自転車にも乗れる。なんでもできるということが、とてもうれしい。近所の人だって、私が糖尿病だなんて知らないんですから(笑)」。  現在の菊池さんのHbA1cは6.7%。このコントロールが神経障害を克服したのだ。

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