中性脂肪さげると血糖値がさがる?

引用文ですが~
http://www.dm-net.co.jp/tg/tg03-11.htm#01-a

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第3回 トリグリセライドコントロール方法
 

も  く  じ
前回までのポイント
1.血糖コントロール!
a.糖尿病でトリグリセライドが高くなる理由
b.血糖値を下げる治療はトリグリセライドも下げる
2.トリグリセライドコントロールは低HDLコレステロール血症も改善する
3.食事と運動によるトリグリセライドコントロール
a.トリグリセライドコントロールのための食事療法
b.トリグリセライドコントロールのための運動療法
4.どこまでトリグリセライドを下げるか?
5.薬によるトリグリセライドコントロール
a.フィブラート
b.スタチン
c.コレステロール吸収阻害薬
d.脂質低下薬の相互作用について
6.おわりに
 

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 このコーナーでは、糖尿病治療におけるトリグリセライド(中性脂肪)コントロールの大切さについて解説してきました。3回目の今回は、「では、どうすればトリグリセライドをコントロールできるのか」について解説します。


 
 


 

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できるのか」について解説します。

本題に入る前に、前回までの話のポイントをまとめておきましょう。


1. 血糖コントロール!

a. 糖尿病でトリグリセライドが高くなる理由
「どうすればトリグリセライド(中性脂肪)をコントロールできるのか」の答えは、「なぜ糖尿病ではトリグリセライドが高くなるのか」を理解することで得られます。そしてその理由はすでに前回解説しましたが、もう一度簡単にお話しします。
理由は主に2つあり、1つはトリグリセライドの多くはからだの中で糖分が変化して作られるということです。糖尿病で血糖値が高い状態は、からだの中に糖分があふれている、つまりトリグリセライドの原料がたくさんあるということを意味しています。その影響で中性脂肪値が高くなりやすくなります。
理由の2つ目は、からだの中で‘脂質の流れ’を調整しているリポ蛋白リパーゼ(LPL)という酵素の働きが、インスリンによって活性化されるということです。糖尿病で血糖値が高くなるのはインスリンの作用が低下しているからです。ですから LPL が活性化されず、肝臓から放出されたばかりのトリグリセライドに富むリポ蛋白(脂肪を運搬する蛋白質)が、そのままのかたちで滞りがちになります。その影響でトリグリセライドが高くなりやすくなります。二次性脂質異常症の治療
b.血糖値を下げる治療はトリグリセライドも下げる
 さて、糖尿病でトリグリセライド(中性脂肪)が高くなる理由を思い出していただいた上で、改めて「どうすればトリグリセライドをコントロールできるのか」を考えてみると、おのずと1つの答えが出てきますね。血糖値をコントロールしてあげればよいのです。
血糖値をしっかりコントロールすることは、トリグリセライドの原料(体内の糖分)を減らすことになります。また、血糖コントロールのためには、インスリンの作用を増やす必要があり、それは LPL を活性化することになり、体内の‘脂質の流れ’を改善してトリグリセライドを減らします。
つまり、糖尿病に伴う高トリグリセライド血症の治療の基本は、「糖尿病そのものをきちんと治療する=良い血糖コントロールを維持する」ということです。
もちろん、糖尿病で血糖値が高いこととは別の理由で高トリグリセライド血症になることもあります。しかし、その場合においても、血糖コントロールのための食事療法や運動療法は、トリグリセライドコントロールに役立ちます。脂質異常症の治療における生活改善の効果

2.トリグリセライドコントロールは
低HDLコレステロール血症も改善する


 ところで、シリーズ第2回目で「糖尿病では高トリグリセライド(中性脂肪)血症だけでなく、低 HDLコレステロール血症も伴いやすい」とお話ししたのをご記憶でしょうか。HDLコレステロールとは、動脈硬化を予防・改善する働きのある善玉コレステロールのことです。善玉コレステロールが少ないために動脈硬化が進行しやすくなっている状態が「低 HDLコレステロール血症」です。
糖尿病では、インスリン作用不足による LPL 活性の低下などによって、低 HDLコレステロール血症も併発しやすくなります。そして、トリグリセライドコントロールのための運動療法や薬物療法は、HDLコレステロールを増やす効果もあり、低 HDLコレステロール血症も改善できます。糖尿病と高 LDLコレステロール血症

脂質異常症のタイプと糖尿病の関係

3.食事と運動によるトリグリセライドコントロール

a.トリグリセライドコントロールのための食事療法
 いよいよ本題です。まずは食事療法によるトリグリセライドコントロールについてみていきましょう。
前にお話ししたとおり、血糖コントロールはトリグリセライドを下げる方向へ働くので、食事療法の進め方も糖尿病の食事療法と基本的には同じです。ここでは特に重要なポイントをピックアップしてまとめておきます。

・炭水化物・糖分を摂り過ぎない
 これも前回お話ししたことですが、トリグリセライドの日本語の名称「中性脂肪」には「脂肪」とついているものの、脂肪分の摂り過ぎだけでトリグリセライド値が高くなるのではありません。むしろ炭水化物の摂り過ぎが原因です。
炭水化物は体内で最終的にブドウ糖になり、それがエネルギーの源として使われ、余った糖分が「中性脂肪(トリグリセライド)」になります。トリグリセライドを上げないためには、余分なブドウ糖を増やさないようにすること、つまり、炭水化物や糖分を必要以上に摂らないことです。炭水化物の摂取量を減らす方法


・食事全体のカロリーオーバーにも注意
 炭水化物の摂取量を減らしたからといって、脂質(脂肪分)を摂り過ぎるとどうなるでしょう。脂質は、1gあたりのカロリーが炭水化物や蛋白質の2倍以上もあるので、体脂肪がつきやすく太りやすくなります。「体脂肪が増える=太る」ということは、トリグリセライドやコレステロールの原料を体内にたくさん抱え込むこと意味しますし、インスリンの働きも悪くなります。それに、脂質を摂り過ぎると、悪玉コレステロールも増えます。
摂取カロリーを守ったうえで、バランスの良い食事を心掛けてください。肥満と糖尿病、高トリグリセライド血症

・お菓子やジュース・アルコールを控える
 甘いお菓子は糖分の固まりのようなものです。使われている糖分も、消化吸収に時間がかかる多糖類(でんぷんなど)ではなく、よりブドウ糖に近い少糖類(砂糖など)が多いので、食べた後に血糖やトリグリセライドが高くなりやすくなります。甘いジュースも同様です。
アルコールはその種類にもよりますが、ビールや日本酒などの醸造酒は糖分を多く含みます。男性でトリグリセライドコントロールがうまくいかない人の場合、アルコールの飲み過ぎが原因と考えられるケースが少なくありません。飲酒が糖尿病、脂質異常症に及ぼす影響

・揚げ物をなるべく控える
‘揚げ物’は‘あぶら物’とも呼ばれるくらいですから「脂肪分が多い」と思われるかもしれません。確かに脂肪分が多いものの、フライやてんぷらなどは衣に使われている小麦粉の量も相当なもので、炭水化物も多いメニューです。さらに、衣が調理油を吸収しているので、一度に炭水化物と脂質の両方をたっぷり食べてしまうことになります。

・果物は野菜のかわりにならない
 果物も‘水菓子’というくらいで、糖分をたくさん含んでいます。「野菜のかわりに果物を」と、果物をたくさん食べるのは正しい方法ではありません。


・食物繊維を多く摂る
 食物繊維には消化吸収スピードを抑えて食後の血糖やトリグリセライド上昇を抑制したり、コレステロール値を下げる働きがあります。この働きを効率良く生かすには、毎回、食事の最初に食物繊維の多い食べ物を食べることです。具体的には、サラダを食前に食べると良いでしょう。食物繊維の多い食品
食事療法に関するその他のアドバイス

b.トリグリセライドコントロールのための運動療法
 続いて運動によるトリグリセライドコントロールですが、これも糖尿病の運動療法と基本的に同じと言ってよいでしょう。運動によって体脂肪が燃焼されてトリグリセライドが減りますし、インスリンの働きを高めてトリグリセライドを下げたり善玉コレステロールを増やすことも、運動療法のすぐれた効果です。
運動の種類としては、ウォーキング、軽めのジョギング、サイクリング、水泳などが良いとされています。からだに十分に酸素を取り入れながら行う有酸素運動を継続していくことが大切です。


 運動をスタートしたら、なるべく1回あたり20分以上続けるようにしてください。運動開始直後は主要なエネルギー源として体内の糖が使われますが、20分後ぐらいを境に、エネルギー源に占める脂肪の割合が増えてくるからです。トリグリセライドコントロールのためには、脂肪を消費したほうがより効果的と考えられます。
もちろん20分に満たない運動をこま切れに行っても、血糖を消費し結果的に脂肪の貯蓄を解消することにつながります。「20分も時間はとれないから運動しない」のではなく、通勤や買い物で外出するときに、からだを動かすチャンスを見付けるようにしましょう。例えば、エスカレーターを使わない、電車やバスに乗ったら、わざと目的地より手前で下車して歩く、といったことです。
なお、糖尿病による血管障害(網膜症や腎症、神経障害、心臓病など)がある人や、高齢の方は、運動療法を始める前に、運動の種類や量について主治医によく相談してください。運動療法の注意事項

4.どこまでトリグリセライドを下げるか?
 食事療法と運動療法によってトリグリセライドが低下しますが、どこまで下げれば良いのでしょうか?
実をいうと、コレステロールと違ってトリグリセライドは日内変動が大きいことや、近年になってから高トリグリセライド血症の重要性が注目され始めたことが関係して、臨床研究データがそれほど蓄積されていません。医療関係者向けのガイドラインを見ても、LDL(悪玉)コレステロールについては血管障害の危険因子の程度に応じて治療目標が細かく分かれていて、糖尿病の患者さんは厳格にコントロールすることが推奨されているのに対し、トリグリセライドについては今のところ、危険因子の有無や程度に関係なく「空腹時採血の検査で150mg/dL」という数値が示されています。血清脂質値のコントロール目標 それぞれの患者さんの状態に即した信頼性の高いトリグリセライドコントロールの目安が示されるようになるには、もう少し今後の研究の成果を待たなければなりません。ただし、現在でもすでに、HDL(善玉)コレステロール以外の血清脂質値(LDLコレステロールとトリグリセライド,non-HDLコレステロール)は、低ければ低いほど良いと考えられています。non-HDLコレステロール そしてなにより、今すでに脂質異常症であることがわかっている患者さんの場合、研究が十分に進むのを待ってから治療するのでは遅すぎます。それまでの間に血管障害が進んでしまうかもしれません。とくに糖尿病の患者さんの場合は血管障害が進みやすいのでなおさらです。糖尿病がある場合、食後の高トリグリセライド血症もしっかりコントロールするために、空腹時採血の検査なら100mg/dL近くまで下げたほうがよい、という意見もあります。
現実的な考え方としては、ガイドラインが示している「空腹時で150mg/dL」未満を1つの目安にコントロールすべきと言えるでしょう。この目標を食事療法と運動療法だけで実現するのはなかなか困難なことが少なくありません。そのようなとき、薬を使ってコントロールすることになります。

5.薬によるトリグリセライドコントロール

a.フィブラート:トリグリセライドを下げて、HDLコレステロールを増やす
 高トリグリセライド血症の治療には、フィブラートという薬が用いられます。この薬は、体内の‘脂質の流れ’を促進する LPL を活性化させて、トリグリセライドを下げるとともに HDL(善玉)コレステロールを増やします。また、LDL(悪玉)コレステロールも下げるだけでなく、その粒子のサイズを大きくする作用もあって、それによって超悪玉コレステロールも減らします。
近年では、フィブラートのうちのフェノフィブラート(リピディル®)という薬が、インスリン抵抗性を改善し(インスリンの働きを強め)たり、血管障害を防ぐアディポネクチンを増やすなど、いろいろな働きがあることがわかってきています。
なお、前回「FIELD」という、糖尿病性血管障害抑制効果を示した大規模臨床試験の結果を紹介しましたが、その FIELD で用いられたのが、フェノフィブラートです。フェノフィブラートの主な作用

関連情報: 大規模臨床試験「FIELD」オフィシャルサイト
 →http://fieldstudy.jp
リピディル®情報サイト
 →http://lipidil.jp
・注意点
 腎臓の働きが低下していると副作用が現れやすくなります。もし副作用が現れた場合には早期発見できるように、通院時にこまめに検査を受けていただくことになります。腎機能の検査値によっては処方されない場合もあります。
なお、現れる頻度は非常にまれですが、フィブラートや次に紹介するスタチンには、「横紋筋融解症」という副作用があることが知られています(「d.脂質低下薬の相互作用について」の項参照)。

b.スタチン:LDLコレステロールを下げて、トリグリセライドも少し下げる
 肝臓でのコレステロール合成を阻害する(邪魔する)薬です。主に大血管障害(動脈硬化)の強い危険因子である LDL(悪玉)コレステロールを下げる薬で、高 LDLコレステロール血症の患者さんによく処方されます。トリグリセライドも少し下げます。
スタチンが動脈硬化による心臓病や脳卒中を減らすことについてはすでに十分な科学的根拠が確立されていて、近年では動脈硬化そのものを改善する働きもあることが報告されています。なお、糖尿病と高 LDLコレステロール血症の直接的な関係は薄いのですが、両者を併発することもあり、その場合に使用が考慮されます。

・注意点
 腎臓や肝臓の働きが低下していると副作用が現れやすくなる点は、他の多くの薬と同じで、注意が必要とされます(薬の多くは腎臓または肝臓で代謝されるからです)。また、非常にまれな副作用として横紋筋融解症があります。

c.コレステロール吸収阻害薬(エゼチミブ)
 腸からのコレステロールの吸収を抑制する、最近登場した薬です。LDLコレステロールを下げる働きがメインですが、トリグリセライドも少し下がります。脂質低下薬の使い分け
・注意点
 空腹時血糖値が上昇することがある点に注意が必要です。また、肝機能障害の副作用が現れることがあるので、肝臓の働きが低下している人には慎重に処方されます。

d.脂質低下薬の相互作用について
 フィブラートやスタチンを服用している患者さんに、非常にまれながら横紋筋融解症という副作用が起こることが知られています。とくに、腎臓の働きが低下している人にフィブラートとスタチンの両方が処方された場合、その頻度が高くなるとされています。これは、両方の薬が互いに血中濃度を上昇させるように働くためと考えられています。このため、腎臓の働きが低下している人には、併用は「原則禁忌」とされていて、どうしても必要がある場合のみ慎重に併用されることになっています。
前回取り上げた「FIELD」という大規模臨床試験でも、両方の薬が処方された患者さんがかなりいましたが、そのことで横紋筋融解症は起きませんでした。アメリカではフィブラートとスタチンの合剤(両方の成分を1つにまとめた薬)も開発されています。「FIELD」でのフィブラートとスタチン併用例 とはいっても横紋筋融解症は重症になると、命が左右される場合もある危険な副作用です。患者さんには、副作用ではないかと気になることがあれば主治医に相談し、不自然な筋肉痛や脱力感を感じたり、褐色尿(黒ずんだ尿)が出たら、服薬を中止してすぐに受診するよう伝えてください。フィブラートとスタチン併用の工夫

6.おわりに

「糖尿病性血管障害のより確実な抑止のために―トリグリセライドコントロールの重要性―」をテーマに、3回にわたって連載してきました。
以前は「糖尿病で中性脂肪値が高くなるのは自然なことで仕方がない」という考え方もありましたが、今は違います。糖尿病性血管障害を減らすには、血糖コントロールだけでは限界があります。血糖、血圧、トリグリセライド、コレステロール――これらをしっかりコントロールすることです。それが網膜症や腎症などの細小血管障害を抑え、心臓病や脳卒中などの大血管障害のより確実な抑止につながります。



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