ケトン体は、体内のエネルギー代謝の過程で脂肪を分解するときに生成される遊離脂肪酸という物質の代謝産物で、
●アセト酢酸
●3-ヒドロキシ酪酸:アセト酢酸が酵素作用により変化したもの
●アセトン:アセト酢酸が別の作用により変化したもの
という3つの物質の総称で、総ケトン体ともいい、糖尿病においては、血糖コントロールの管理状態を調べることができます。
ケトン体は、一般的な健康診断などでは、あまり見慣れないかもしれませんが、血糖コントロール状況があまりよくない人や、治験のように詳細を調べる必要のある場合に出てくる項目です。
体内でエネルギー源として主に使われるのは糖質です。ところが、糖尿病の場合は、インスリン作用不足によって体内の細胞に血糖が取り込まれなくなり、エネルギー源として血糖が利用できなくなります。
そうすると、体はエネルギー源として脂肪を分解してできる血糖(糖新生)を利用しようとするわけですが、この、脂肪を分解するときに、ケトン体が生成されます。肝臓で生成されたケトン体は、肝細胞では代謝ができず、筋肉や腎臓で再利用されます。そして筋肉や腎臓での処理能力を超えた場合は血中や尿中に出るため、血中ケトン体や尿中ケトン体が増加します。
糖尿病でケトン体が著しく増えた場合、アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸が酸性であるため、血液のpH(ペーハー/ピーエイチ:酸性、アルカリ性を示す指標)が酸性に傾きます。
pHが7.3以下になると糖尿病性ケトアシドーシスという酸血症になり、速やかに治療が必要です。糖尿病性ケトアシドーシスは、主に1型糖尿病患者に発症し、悪心、嘔吐、腹痛などの症状がみられ、さらに進行すると血圧低下、頻脈、意識障害などを引き起こします。
1型糖尿病患者が、病気などの理由でインスリン治療を中止した場合、ケトン体は著しく増えますが、インスリン治療を再開するとケトン体は減少しますので、インスリンとケトン体はおよそ逆に変動するといえます。