市場原理とアメリカの要求が引き起こす薬害

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日本を守るのに右も左もない

2007年05月24日

市場原理とアメリカの要求が引き起こす薬害

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「タミフル」の副作用をはじめとする薬害問題の背後にも、アメリカの圧力があるらしい。
『「改革」にだまされるな! 私たちの医療、安全、教育はこうなる 』(関岡英之・和田秀樹著 PHP研究所)によれば、アメリカが薬や医療機器の承認審査の手続きにも口出ししてきているらしい。
以下、引用。

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日本では04年に薬事法が改正されたうえ、医療品医療機器総合機構(PMDA)という独立行政法人が設立され、そこが薬や医療機器の審査を行うようになったそうです。アメリカ政府から日本政府への『年次改革要望書』の05年版によると、これは「医薬品と医療技術の承認審査時間を改善する事を一つの目的として行われた」のだそうです。

日本に対するアメリカの要求は、要するに「アメリカが新しく開発して日本に輸出しようとする薬や医療機器の審査を迅速化して、早く承認を下ろせ」ということに尽きます。そのために日本政府は、薬事法の改正や独立行政法人機構の設立までして応えたわけです。

独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページを見てみますと、「審査等手数料」というものがあるんです。医薬品の新規承認1件当り何百万円などという料金表まで掲載されています。これは審査を受ける側の製薬会社がPMDAに払うもので、PMDAはその見返りに審査期間を短縮し、迅速に承認を下ろす、というものだそうです。
これはまさに、耐震強度偽装事件で問題になった、建築の確認審査と同じシステムです。

この「審査等手数料」という制度が導入された理由も、実はアメリカからの圧力だったのです。アメリカはPMDAが設立される以前、すでに02年版の『年次改革要望書』で、「ユーザーフィーが、新たな審査機関の予算を補完するために使われ、それが新製品やその他の使用法のより迅速な承認に利用される資源となることを保証する」よう、日本政府に要求しています。「ユーザーフィー」というのが「審査等手数料」、「新たな審査機関」というのがPMDAのことです。

アメリカが要求して日本に導入されたユーザーフィーというのは、『ビッグ・ファーマ』(マーシャ・エンジェル著 篠原出版新社)によると、アメリカでも92年に導入された比較的新しい制度ですが、いまやFDA(米国食品医薬品局)傘下の医薬品評価研究センターの予算の半分が、製薬会社からの収入になってしまっているそうです。

もともとFDAは、市販後の副作用や安全性の監視、製薬工場の定期的な査察、過大や不正な広告のチェックなどが主要な任務であったのに、ユーザーフィーが導入されて以降は、新薬の認可をできるだけ早く下ろすことが最優先になってしまい、審査の厳格さも、安全性の監視役としての機能も大きく低下してしまったそうです。その結果、アメリカでは、ユーザーフィー導入以降の10年間で、死亡事故などが起きて販売停止になった薬が13品目もあるそうです。

テレビ番組『CBSドキュメント』もメルク社とファイザー社の消炎鎮痛剤「バイオックス」「セレブレックス」の薬害問題を取り上げていました。FDAは、心臓病発生の副作用があるにもかかわらず、これらの薬を承認してしまったんですが、問題はそれだけではなく、実はFDAの担当官がこれらの薬に副作用の疑いがあることを数年前から内部でレポートしていたのに、製薬会社との関係悪化を心配した上司にその訴えを握りつぶされたと、実名、顔出しで番組に出演し、証言しました。

その担当官は、アメリカの議会でも「製薬会社が支払う審査料に依存するFDAの構造的な問題で、バイオックスやセレブレックスの事件は氷山の一角にすぎない」と証言しているのですが、同じ構造が、すでに04年に日本にも持ち込まれているわけです。

さらにアメリカの要求はエスカレートして止まらない。

06年12月に公表された最新版の『年次改革要望書』では、アメリカは「原材料の安全性と生体適合性を立証するために要求される情報を大幅に削減する」などという、信じられないことを日本に要求してきています。

薬害問題の背後にあるもの、それは、国民の安全よりも利益を優先する市場原理と、それを押しつけるアメリカの圧力に他ならない。(本郷)