SGLT1/2阻害薬のLX4211は2型糖尿病患者の心血管リスクを低減する

2012/11/8

Dallas diabetes and endocrine centerのJulio Rosenstock氏

2型糖尿病患者において、ナトリウム・グルコース共輸送体sodium glucose transporterSGLT)1/2阻害薬であるLX4211は、収縮期血圧や体重、血糖コントロールなど複数の心血管イベントのリスク因子を改善できることが示された。胃腸、泌尿生殖器の有害事象についても良好な結果だった。Dallas diabetes and endocrine centerのJulio Rosenstock氏らが、11月7日までロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で発表した。
主に小腸に存在するSGLT1は、食事からのグルコース吸収と腎臓での糖再吸収を行う。一方、ほぼ全てが腎臓に存在するSGLT2は、腎臓での糖再吸収のみを行う。SGLT2阻害薬は、尿への糖排泄を促進するため、2型糖尿病患者の血糖値を低下させる。SGLT2阻害による血糖コントロールの改善は、低血糖のリスクを伴うインスリンに依存しないことも特徴だ。SGLT1及びSGLT2を阻害するLX4211は、臨床試験や2型糖尿病患者の短期試験において、消化管からの糖吸収を低減し、尿中へのグルコース排泄を促進することが示されている。
今回Rosenstock氏らは、メトホルミン単独療法で十分なコントロールができなかった2型糖尿病患者に対し、LX4211もしくはプラセボを投与し、LX4211の用量ごとに有効性と安全性を検討した。
対象は、年齢が18~75歳、BMIが45kg/m2以下、HbA1c値が7%以上10.5%以下で、メトホルミンで加療中の2型糖尿病患者299人とした。はじめの2週間でスクリーニングを行い、LX4211 75mgを1日1回投与する75mg qd群(59例、56歳、女性42%、BMI 33.4kg/m2、体重96.2kg、HbA1c値8.0%)、200mgを1日1回投与する200mg qd群(60例、56歳、女性72%、BMI 34.2kg/m2、体重95.6kg、HbA1c値8.3%)、200mgを1日2回投与する200mg bid群(60例、56歳、女性52%、BMI 32.8kg/m2、体重95.0kg、HbA1c値8.4%)、400mgを1日1回投与する400mg qd群(60例、56歳、女性52%、BMI 32.7kg/m2、体重91.4kg、HbA1c値8.1%)、プラセボを投与するプラセボ群(60例、55歳、女性57%、BMI 32.2kg/m2、体重90.6kg、HbA1c値7.9%)の5群に割り付けた。治療は12週間行い、その後2週間のフォローアップを実施した。12週後までに、75mg qd群で7例、200mg qd群で6例、200mg bid群と400mg qd群で5例、プラセボ群で7例が中断した。
主要有効性アウトカムは、ベースラインから12週後までのHbA1c値の変化とした。結果、HbA1c値はプラセボ群に比べ治療群全てで有意に低下した。最も低下したのは400mg qd群で、次が200mg bid群(ともにP<0.001)、200mg qd群、75mg qd群(P<0.005)と用量が多いほど低下した。
投与1日目の24時間尿糖排出は、プラセボ群に比べ200mg qd群において有意に増加した(P<0.05)。さらに、200mg qd群の12週後、200mg bid群の1日目と12週後、400mg qd群の1日目と12週後では、いずれもプラセボ群に比べ有意に増加した(P<0.001)。
12週後の体重は、200mg bid群が最も低下しており、次が200mg qd群、400mg qd群(いずれもプラセボ群と比べてP≦0.001)、75mg qd群の順だった。
12週後の収縮期血圧は、用量が多いほど低下した。特に、200mg bid群と400mg qd群はプラセボ群に比べ有意な低下が認められた(P<0.05)。
HDLコレステロールがベースラインに比べ12週後に有意な増加を見せたのは、75mg qd群、200mg bid群、400mg qd群(いずれもP<0.05)だった。LDLコレステロールは、12週後で有意な変化を認めなかった。
有害事象については、少なくとも1つの有害事象を有する割合が、75mg qd群で66.7%、200mg qd群で60.0%、200mg bid群で61.7%、400mg qd群で57.6%、プラセボ群で66.7%だった。有害事象による中止例は、75mg qd群で1.8%、200mg qd群で1.7%、400mg qd群で1.7%、プラセボ群で1.7%と良好だった。胃腸、泌尿生殖器の有害事象も良好だった。全死因死亡は全群で発生しなかった。
これらの結果からRosenstock氏は、「SGLT1/2阻害薬のLX4211は、2型糖尿病患者において、インスリンに依存せず、複数の心血管イベントのリスク因子を改善できることが示された」と結論し、「尿糖排泄量は200mg1日1回投与で水平状態に達したため、さらなる用量反応の改善はSGLT1阻害によって向上することが示唆された。今後は、心血管への影響や代謝の変化、安全性と耐性の関連を判断するための長期試験を行う必要がある」などと考察した。

活性酸素から網膜細胞を保護し、緑内障を予防

活性酸素から網膜細胞を保護し、緑内障を予防

 

ビルベリーに含まれるアントシアニンなどの成分には、目の働きをサポートしてくれたり、目の病気を予防したりする効果があることが、さまざまな研究によって明らかになっています。
日本をはじめ、世界各国の大学や研究機関や企業などが、ビルベリーがもたらす目や体への嬉しい効果を研究しているのですが、今回は、ビルベリーのエキスが緑内障の予防に役立つという効果についてご紹介します。
緑内障という病気は、目の網膜や、網膜と脳をつなぐ視神経、視神経乳頭が高眼圧や活性酸素によるダメージを受けることによって傷つき、視野が狭くなるという病気です。
緑内障の初期の段階では、視野のごく一部が欠けてしまいます。通常、人は両目を使って物を見るため、初期の段階では視野の一部が欠損しても気付かないことも多いのですが、緑内障が進行していくと、欠損している部分が次第に大きくなるため、視野が欠ける症状が自覚できるようになり、最悪の場合、失明に至ることもあります。
緑内障を引き起こす原因の一つに、活性酸素によるダメージが挙げられます。活性酸素は喫煙や栄養の偏り、暴飲暴食、食生活の乱れのほか、紫外線や過度のストレスなどによって発生し、体内をサビつかせてしまう要因となります。緑内障の症状の一つである視野欠損は、活性酸素の発生によって、目の網膜や、網膜から脳に情報を送る視神経が傷つけられることで発症すると考えられています。
研究では、ビルベリーのエキスが緑内障の予防に役立つかどうかを調べるため、ビルベリーのエキスを加えた網膜細胞と、ビルベリーのエキスを加えていない網膜細胞の双方に活性酸素を発生させ、それぞれの網膜細胞の生存率を調べました。
ビルベリーのエキスを加えていない網膜細胞は、活性酸素によるダメージによって、網膜細胞は約50%が死滅してしまいました。一方、ビルベリーのエキスを加えた網膜細胞は、活性酸素が生じても約90%が生存していました。
この研究結果によって、ビルベリーのエキスには、活性酸素から網膜細胞を保護する働きがあることが示されるとともに、活性酸素によって誘発される可能性のある緑内障の予防効果についても、期待が寄せられることになりました。
しかし、ビルベリーのエキスだけで緑内障を完全に予防できるというわけではありません。喫煙を控えたり、バランスの取れた食生活を送ったり、紫外線対策をきちんと行うなどして、活性酸素を減らす努力も忘れないようにしましょう