糖尿病(血糖値)と痛風(尿酸値)の意外な関係

糖尿病(血糖値)と痛風(尿酸値)の意外な関係
Q:糖尿病も痛風も共に生活習慣病といわれていますが、糖尿病の方は尿酸値が低いと聞
きましたが、本当ですか。
A:糖尿病の方の中でも尿糖がでているときは確かに血清尿酸値が低くなることが分かっ
ています。これは空腹時血糖が高くなると尿酸の排泄が促進されるためです。しかし
糖尿病だからといって尿酸値が必ずしも低いとか、痛風にならないというわけではあ
りません。また、尿酸値が急激に上下すると痛風発作を起こす原因になるため、血糖
値および尿酸値を両方コントロールしている場合はさらに注意が必要となります。
糖尿病で尿糖がでているときは確かに血清尿酸値が低くなります。しかし痛風に糖尿病を合
併しているからといって必ずしも血清尿酸値が低いわけではありません。血清尿酸値は糖尿病
の病期によって上下します。尿糖がでる前の段階でインスリン抵抗性がある状態では、血清尿
酸値は高くなります(図1参照)。また糖尿病性腎症を発症した場合も尿酸値は高くなります。
血清尿酸値を変動させる機序
インスリン抵抗性のために高インスリン血症になると尿酸排泄量が減って血清尿酸値は上昇
します。これは高インスリン血症は腎尿細管におけるナトリウム再吸収を増加させ、これと共
役する尿酸の排泄を低下させるためと考えられています。
次に、糖尿病を発症すると血清尿酸値は低下します。これは空腹時血糖が140mg/dL以上にな
ると尿酸の腎排泄が増えるためです。機序として高血糖に伴う浸透圧利尿、尿細管機能の低下、
および糸球体濾過量の増加が考えられています。
最後に、糖尿病性腎症で血清尿酸値が増加します。この機序は、糸球体濾過量が減り、尿酸
血清尿酸値(
mg

dL

図1.糖代謝異常の進行と血清尿酸[出典:細谷龍男]
― 22 ―
の腎排泄が低下するためと考えられています。
痛風と糖尿病の合併
糖尿病と痛風は過食過飲により悪化する生活習慣病であることから両方を合併することは多
いように思われますが、実際はそれほどではありません(岩谷の報告では6.8%、五味らの報告
では3.6%でした)。ただし痛風患者で耐糖能異常を有する頻度は高く、20~50%と報告されて
います。
また、これらにより血清尿酸値が低くなる中等度以上の糖尿病では痛風を合併することはな
いかのように思えますが、実際はそうとも限りません。糖尿病発症までに高尿酸血症が続いた
患者では、体内の尿酸蓄積量が増大し、痛風発作を起こす可能性があります。また、血糖値の
コントロール不良から血清尿酸値の急激な低下をきたし痛風発作を起こす可能性もあります。
したがって、血糖値が高めのときは、血清尿酸値が低いからといって痛風に対する注意が不
要になるとはいえないことに留意してください。
メタボリックシンドロームと尿酸値
尿酸自体は動脈硬化を生じるものではありませんが、メタボリックシンドロームには高尿酸
血症の合併が多く、また尿酸値は内臓脂肪蓄積量を反映するよいマーカーであると考えられて
います。しかし2008年4月1日から始まった特定健診・特定保健指導の基本的な健診項目(血
液検査)には残念ながら血清尿酸値の測定はありません。薬剤による尿酸降下療法だけではメ
タボリックは改善せず、またリスクファクターも減りません。
【参考資料】
Π 臨床と薬物治療、22(5)、422、2003
π 日本医事新報、4025、107、2001
∫ 医薬ジャーナル、41(10)、109、2005
ª グラクソスミスクラインホームページ「高尿酸血症・痛風診療のPit-fall」
→ http://zyloric.jp/gout/cont01/qa/cont01_q17.htm