1型糖尿病の予防に成功、米国研究所が「SR1001」で効果確認

 

1型糖尿病を発症前に予防する、新しい治療薬について、動物実験で成功した。米国のスクリプス・リサーチ・インスティテュートの研究グループが、エンドクリノロジー誌2015年3月号で報告した。

合成剤で免疫細胞を邪魔

1型糖尿病は、膵臓でインスリンを産生するβ細胞が破壊されるものだ。本来は自分を守る免疫の影響で起こるもので「自己免疫疾患」と呼ばれている。標準的治療は、失ったインスリンを注射で置き換える方法がとられている。今回の新しい研究では、免疫システムが引き起こす初期の破壊を予防する可能性に焦点を当てて病気が発症する前に止めることを目指したものだ。研究グループは、「SR1001」として知られる実験用の合成剤を、肥満ではない糖尿病になりやすい動物で試した。SR1001は、1型糖尿病と関連のある免疫細胞「Th17」の増加に重要な役割を果たす1組の「核受容体」を標的としている。RORαとRORgという名前の細胞のDNAを収める核の中にある受容体というタンパク質だ。研究グループは、この薬が1型糖尿病においてTh17を邪魔して、病気の進行を妨げる可能性について実験を行った。

1型糖尿病を抑え込む

その結果、SR1001は、動物モデルで糖尿病の発症を完全に防いだ。インスリン産生細胞を破壊する膵島炎を最小に抑制。また、Th17細胞の産生を含む免疫反応を抑え、インスリンレベルを標準に維持した。結論として、Th17細胞は1型糖尿病発症において病理学的に重要な役割を持つと確認。さらに、この細胞を標的とした合成剤が、1型糖尿病予防治療としての可能性を持つと分かった。今後、1型糖尿病の予防に道が開かれる可能性もありそうだ。

文献情報

New Compound Prevents Type 1 Diabetes in Animal Models—Before It Begins

News Release

ビタミンDで1型糖尿病を予防 自己免疫疾患に対し保護作用

 

 小児・若年期に適切なレベルのビタミンDを維持していれば、1型糖尿病の発症を半分に減らせる可能性があることが、ハーバード公衆衛生大学院の研究であきらかになった。
自己免疫疾患にビタミンDが有効である可能性

ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素としてよく知られている。ビタミンDをカルシウムといっしょに摂取すると、カルシウムが体内へ吸収されやすくなる。 ビタミンDの作用は骨の形成だけにとどまらない。この10年でビタミンDの研究は大きく変わっており、最近の研究では、ビタミンDに免疫系が体の組織を攻撃するのを防ぐ作用があることが示唆されている。
 
ハーバード公衆衛生大学院(HSPH)の研究者によると、小児・若年期に適切なレベルのビタミンDを維持していれば、1型糖尿病の発症を半分に減らせる可能性がある。この研究は、医学誌「American Journal of Epidemiology」オンライン版に2月3日付けで発表された。
「自己免疫疾患を予防するために、ビタミンDを補充すると効果的であるかもしれません。1型糖尿病のような深刻な疾患を、簡潔で安全な介入により予防できとすれば驚くべきことです」と、カサンドラ ミュンガー氏は話す。
1型糖尿病は、体に備わっている免疫系が膵臓内でインスリンを産生しているβ細胞を攻撃し破壊することで発症すると考えられている。米国糖尿病学会(ADA)によると、米国の糖尿病有病者は2,580万人と推定されているが、うち5%が1型糖尿病だ。若年発症例が多いが、およそ60%は20歳以降に発症するという。
研究チームは、米国防総省が1980年代半ばから800万の軍人から収集した4,000万件以上の血液サンプルをもとに、前向きケースコントロール研究を行った。1997~2009年に310人が1型糖尿病と診断された。研究チームは発症の前後の血液サンプルを調べて、613人の対照群と比較した。
その結果、ビタミンDの血清レベルが75nmol/Lを超える人では、75nmol/L未満の人に比べ、1型糖尿病の発症率がおよそ半分に低下することがわかった。
「ビタミンDのレベルが高くなると、1型糖尿病のリスクは低下しました。ビタミンDが1型糖尿病に対して保護的に作用する可能性があることが強く示されました」と、ミュンガー氏は話す。
ビタミンは通常は体内では合成できない微量栄養素をさすが、ビタミンDは体内で作ることができる。ビタミンDは皮膚で作られ、皮膚がビタミンDを作るためには、紫外線の力が必要だ。日光に当たらなければ、ビタミンDは作られない。
一般的に、晴れた日に顔と肘から先の腕を15分直射日光に当てるだけで、ビタミンDが合成されると考えられている。日照の少ない北欧の人々が、少ない晴れた日に戸外で日光浴をするのは、生活の知恵といえる。
「ビタミンDと1型糖尿病の発症の関連についてさらに研究が必要ですが、多くの症例で1日1,000~4,000IUのビタミンD補充により予防できる可能性があることが示された意義は大きいといえます」と、ミュンガー氏は強調している。
ビタミンDが不足しているか、足りているかは、血液濃度を測定すればわかる。世界の10億人は、年齢や民族に関わらず、血中のビタミンDレベルが低すぎると推定されている。骨粗鬆症の患者では、さらに多くの人がビタミンD不足だとの調査結果もある。
この研究は、米国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)によって資金が提供された。
Low vitamin D levels may increase risk of type 1 diabetes(ハーバード公衆衛生大学院 2013年2月3日)

 

[ Terahata ]

1型糖尿病の症状と原因 ストレス

糖尿病というと、中高年の人がなりやすい病気というイメージがありますが、子どもや若い人に多い糖尿病もあり、これを「1型糖尿病」と言います。今回は、この1型糖尿病の原因や症状についてご紹介していきます
糖尿病には、大きく分けると「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があります。今回は、そのうちの1型糖尿病について解説します。
 

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1型糖尿病の発症原因、1つは「ウイルス感染」だった

膵臓のβ細胞が破壊されて発症する1型糖尿病。その原因の1つに「エンテロウイルス」の感染が関与しているようだと分かった。米国マサチューセッツ大学の研究グループが、糖尿病の専門誌ダイアベーツ誌の2015年4月号で報告した。

1型糖尿病でβ細胞はなぜ死ぬのか?

 

食事などで血糖値が上がると、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から、血糖値を下げるホルモン「インスリン」が分泌される。この制御がうまく働かなくなって血糖値が高い状態になるのが糖尿病だ。糖尿病のうち「1型糖尿病」は、β細胞が壊れてしまい、発症する。

その主な原因は、普段外敵を攻撃して体を守ってくれている仕組み「免疫」が、何らかの原因でβ細胞を攻撃するようになり、破壊してしまうためと言われている。1型糖尿病の発症には、「遺伝」と「環境」の両方が関わっていると知られている。発症の引き金となる環境要因として疑われているものの1つに、主に腸で増える「エンテロウイルス」の感染がある。

しかしまだ証明はされていない。今回研究グループは、人間の組織に拒絶反応を起こさないネズミにヒトのランゲルハンス島を移植したモデルを使い、エンテロウイルス感染が1型糖尿病の発症に関係するかを調べた。

エンテロウイルスは、人間のランゲルハンス島の細胞にも感染する「コクサッキーウイルスB群(CVB)」という種類のものを用いた。

β細胞はウイルスに感染して死んだ

続く・・・

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1型糖尿病の半数は30歳以降に発症 遺伝子調査で明らかに

第52回欧州糖尿病学会(EASD)

 1型糖尿病の発症は小児~思春期に多いと考えられていたが、実際には30歳以降の発症も多く、全体の半数に上ることが、英国の12万人の遺伝子を調べた「バイオバンク」による調査で明らかになった。
 

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