糖尿病に 毎日 スクワット で足腰の筋肉きたえよう

糖尿病に 毎日 スクワット で足腰の筋肉きたえよう

 

前回に引き続き、ヘルスケアトレーナーの伊藤まさしさんにお話しいただきます。

今回は、健康寿命をのばすために高齢者がすべき簡単なトレーニングに関して、より

具体的な方法をご紹介します。そして、自活のための重要なポイントを学びましょう。
食生活はもちろん重要ですが、それよりも、週1回でも簡単な運動をして
いきましょう。
介護より自活、ベッドより、畳、布団の暮らし、日本の生活様式見直しましょう。

第30回 健康寿命の底上げを目指す 〜超高齢社会に向けて〜【CGS 健康と予防医学】

第31回 簡単な運動が、寿命を延ばす!【CGS 健康と予防医学】

 

腰を動かすと腎臓も動く・・・運動は薬より何十倍も利口者。

腰を動かすと腎臓も動く・・・運動は薬より何十倍も利口者。

腸腰筋と腎臓の連結の様子

腰を動かすと腎臓も動く。

腎臓と股屈筋との繋がり

大腰筋を使った腎臓の内臓マニピュレーション

糖尿病患者の運動機能障害 リハビリ

糖尿病患者の運動機能障害
横浜船員保険病院リハビリテーション科 河辺信秀
糖尿病患者において生じる運動機能障害について,みなさんはご存知でしょうか? 特に糖尿病神経障害を合併した
症例では,その影響が強く現れます.運動機能障害の中でも,筋萎縮は神経障害により引き起こされます.
しかし,
具体的にどのような影響が生じるのかはあまり知られていません.まずはこの点をご紹介したいと思います.
はじめに,筋萎縮により引き起こされる,筋力低下の程度を調査した報告をみてみます.Andersen ら1)によれば,
罹病期間の長い1 型糖尿病患者では,マッチングされたコントロール群と比較して,膝関節伸筋群16%,屈筋群
17%,足関節背屈筋群・底屈筋群21%の筋力低下がみられたと報告しています.さらに,糖尿病神経障害スコアとこ
れらの筋力の間には相関がみられ,神経障害の関与が指摘されています.同様に2 型糖尿病患者における検討でも,
膝関節屈筋群14%,足関節背屈筋群17%,底屈筋群14%の筋力低下がみられました.やはり,筋力低下は神経障害
の程度と関連し,網膜症や腎症との関連はみられなかったとされています.筋萎縮に関する調査でも,糖尿病神経障
害患者では,神経障害の存在しない症例と比較して,下腿の筋容量が32%も減少していたと報告されています.

然,足関節周囲筋群の筋力は41%もの低下がみられました.糖尿病足病変の外的因子のひとつであるhammer/claw
toe(槌趾/ 鷲爪趾)を引き起こす,足部のintrinsic muscle(内在筋)の萎縮もみられます.糖尿病神経障害患者で
は,神経障害のない糖尿病患者および健常者と比べて,筋容量が約50%であったと報告されています.なお,上肢
での筋力低下はあまりみられないようです.このように糖尿病神経障害患者では,下肢の,特に末梢で強く筋萎縮が
発生し,これにより膝・足関節周囲筋群で筋力が低下します.
転倒と深い関係にあるバランス障害も,糖尿病患者でみられる運動機能障害のひとつです.
糖尿病神経障害患者
においては,神経障害のない糖尿病患者および健常者と比べて,総軌跡長や外周面積などのバランス能力の指標が
障害されます.解析の結果,これらのバランス障害には,末梢神経障害が影響を与えるとされています2).
同様に,
Corriveau らは,糖尿病神経障害患者におけるバランス能力の障害を報告しています.また,神経障害の程度とバラ
ンス障害の関連もみられたとしています.これらの報告では,糖尿病患者のバランス障害は,
神経障害による末梢の
知覚鈍麻に起因すると推測しています.
上述のような下肢の筋萎縮や筋力低下,バランス障害は,様々な場面で糖尿病患者に不利に働きます.筋力低下の
程度は,20%前後であるため,例えば,歩く,立ち上がるなどの動作を不可能にするほどの影響はみられません.

かし,足関節周囲,特に底屈筋群の筋力低下は,歩行速度を低下させる可能性があります.運動療法で速歩を行う際
に影響が出るかもしれません.また,階段昇降の下り動作や坂道歩行では影響が大きく,動作が可能でも耐久性は低
下するでしょう.膝関節周囲筋群に関しては,野村らが,糖尿病患者の閉眼片足立ち能力に膝伸展筋力が影響すると
報告しています3).従って,膝伸展筋力の低下は,バランス能力を障害し,転倒の要因となりかねません.
いずれに
してもバランス障害は,坂道,階段,砂利道などの応用動作場面では転倒リスクを高めるでしょう.
これらを改善するためには,立ち上がり運動,ハーフスクワット,踵上げ運動などが有効です.ゴムチューブを用
いたレジスタンストレーニング(膝伸展,足関節底屈運動)も行う価値があるでしょう.これらの運動を血糖コント
ロールという目的に加えて,障害予防や転倒予防にも効果があるという観点で,指導してみるのは如何でしょう? 個
人的には,運動継続意欲の向上につながると考えています.また,神経障害を合併している症例に,
運動療法を指導
する際には,転倒リスクを確認することをお勧めします.目を閉じて片足で立つ(閉眼片足立ち)動作を行ってもら
いましょう.転倒しないように注意してください.5 秒以上,立てない時は,転倒リスクが高いと考えられます.

の場合,座位や臥位での運動を勧めましょう.
今回,糖尿病の療養指導場面において,普段あまり意識することがない運動機能障害について概説しました.ぜ
ひ,これらの点も考慮に入れて,療養指導に役立てて頂けたら幸いです.
文献
1) Andersen H, et al.Isokinetic muscle strength in long-term IDDM patients in relation to diabetic complications.Diabetes.1996
Apr 45(4):440-5.
2) Uccioli L, et al.Contribution of central neuropathy to postural instability in IDDM patients with peripheral neuropathy.Diabetes
Care.1997 Jun;20(6):929-34.
3) 野村卓生, 他.2 型糖尿病患者における片脚立位バランスと膝伸展筋力の関係. 糖尿病.49(3),227~231,2006